嚥下機能を保つには？むせやすい方のための口腔ケア

こんにちは。稲城市矢野口にある、まつもと歯科クリニックです。年齢を重ねるとむせることが増えたと感じる方が増えます。こうした飲み込みに関わる力の低下は、日常生活の質を下げるだけでなく、誤嚥性肺炎などのリスクを高めることもあります。しかし、お口の機能は日々のケアやトレーニングで維持、改善できる部分も多くあります。

ここでは、むせやすい原因や、嚥下機能を保つためのポイントについて詳しく解説します。

オーラルフレイルって何？

口腔機能が低下し始めた状態

オーラルフレイルとは、噛む力や飲み込む力、舌や唇の動きなど、お口の周りの機能がゆっくり低下し始めた状態を指します。大きな病気ではなく軽度の衰えですが、ここで気づけるかどうかが、その後の健康状態を大きく左右します。例えば、以前より硬いものが噛みにくい、すぐに疲れて食事に時間がかかるといった変化は、オーラルフレイルの初期兆候かもしれません。早めの対策によって進行を抑えられるため、日常のちょっとした違和感も見逃さないことが大切です。

むせや食べこぼしなどが起きやすくなる

オーラルフレイルが進むと、飲み込みのタイミングが取りにくくなったり、舌で食べ物を上手に運べなくなることで、むせたり、食べこぼしが増えたりします。また、食べ物が口の中に残りやすくなるため、虫歯や歯周病のリスクも高くなります。むせが続くと食べるのが怖いと感じて食事量が減り、栄養低下につながることもあるため、早めのケアが重要です。

むせが起こる時のリスク、誤嚥性肺炎とは

肺の中で炎症が起こる

誤嚥性肺炎とは、飲み込むべき食べ物や唾液が間違って気管に入り、肺の中で炎症が起きる病気です。高齢者の肺炎の多くを占め、重症化しやすいことから特に注意が必要です。むせるという動作は、気管に入りそうになったものを外へ押し戻すための防御反応ですが、この反射機能が弱くなると、誤嚥が起きても気づかないまま肺へ入ってしまうことがあります。

これを不顕性誤嚥といい、むせが少ない方でも起こり得るため注意が必要です。

お口の中の清潔や、喀出力が関係している

お口の中に汚れや細菌が多いほど、誤嚥した際のリスクが上がります。歯みがきが不十分だったり、舌の上に汚れがたまりやすい方は注意が必要です。また、誤って入ったものを咳で押し戻す力（喀出力）が弱い場合も肺炎のリスクが高くなります。

むせやすい方のケア

毎日の口腔ケアでお口の清潔を保つ

誤嚥性肺炎を防ぐうえで最も重要なのは、まずお口の中を清潔に保つことです。食後だけでなく、寝る前に丁寧に行い、舌の表面につく舌苔などもケアしましょう。舌ブラシがなくても、柔らかめの歯ブラシで奥から手前にぬぐうように軽く清掃するだけでも細菌量を減らせます。また、入れ歯を使用している場合は、毎日外して洗浄し、就寝時は外しておくことで細菌の繁殖を防げます。さらに、定期的に歯科医院でクリーニングを受けることで、セルフケアでは落としきれない汚れも除去できて、誤嚥のリスクを下げることにつながります。

舌やお口の筋肉を鍛えるトレーニング

嚥下機能を維持するには、舌、唇、頬などの筋肉をしっかり動かすことが欠かせません。

例えば、

・「パ」「タ」「カ」「ラ」と強く発音する体操

・舌を上下左右にゆっくり大きく動かす運動

・頬をふくらませたり、すぼめたりする運動

など、日常のすきま時間でも実践できるものが多く、続けることで飲み込みのタイミングが取りやすくなります。また、食事の際にしっかり噛むことも自然なトレーニングになります。噛む回数が増えると唾液もよく出て、飲み込みが滑らかになります。

食事中の姿勢や食材選びを工夫する

むせやすい方は、食事の姿勢ひとつで飲み込みやすさが大きく変わります。背筋をまっすぐに伸ばし、顎を軽く引いた姿勢で食べると、気道がまっすぐになり誤嚥を防ぎやすくなります。また、パサつく食材や水分が多すぎるものは飲み込みにくく、むせやすくなります。とろみを付けたり、一口の量を少なくしたりするだけでも負担が減り、安全に食事を楽しむことができます。

【まとめ】

むせやすい状態は、飲み込みの機能が弱っているサインです。放置すると誤嚥性肺炎のリスクが高くなりますが、毎日の口腔ケアやお口のトレーニング、食事中の工夫によって機能を維持しやすくなります。矢野口の、まつもと歯科クリニックでは、嚥下機能に不安のある方や、むせが増えてきた方の相談も受け付けています。気になることがあれば、早めにご相談ください。